老後の不安を吹き飛ばすには

2023年初の孫子女子勉強会は、田中先生の新刊発売翌日の1月27日。東京には雪予報が出された寒い日でした。

 

 

老後の不安の正体

この日の勉強会の始まりは、もちろん新刊に関連した話題から。田中先生の新刊タイトルは「ただの人にならない『定年の壁』のこわし方」。老後が長くなったことで、老後資金不足の不安を抱く人が増えました。そんな人に向けて、不安を解消する提案が書かれています。

 

勉強会で、田中先生はこう切り出しました。

「老後に不安を抱く人はお金がないから不安だと言います。私のFacebook投稿に対して、『お金はないけど不安はない』と書いてくれた人がいます。世の中には、お金があるけど不安な人もいます」

 

ん?待てよ。老後の不安は資金不足ではないということか?老後の不安の正体は一体何なのか。それを紐解かねばなりません。

 

お金がないから不安の正体

まずは「お金がないから不安」という人の紐解きから。「お金がない」と言う時のお金は、定年時点のお金を指していると思います。定年後の生活を考えると「収入 < 支出」になる。つまり、定年後はお金がどんどん減っていく。老後が長くなったので、死を迎える前に資金が先に底をついてしまうのではという不安にかられます。これが、「お金がないから不安」の正体です。

 

次は「お金がないけど不安がない」という人の紐解き。「お金がない」は、定年時点のお金を指している点は変わりません。定年後の生活が「収入 < 支出」になったとしても、お金の減り方が「お金がないから不安」の人よりは緩やかです。その理由は、定年後も働いて収入を得ているからです。大金を稼ぐ必要はありません。資金が底をつかない程度に稼げれば、「お金がないから不安」になることはありません。

 

お金があるけど不安の正体

続いて「お金があるけど不安」という人の紐解きです。「お金がある」も、定年時点のお金を指しています。お金がある人は、定年後の生活が「収入 < 支出」になっても、死の前に資金が底をつく可能性はぐんと低くなります。

 

では、お金がある人の不安はどこからくるのでしょう?お金が減っていく。それは変えられない確定事項であることに対する不安です。私はお金がある人ではないので、ほんとかどうかは知らんけど(笑)。これが、「お金があるけど不安」の正体(のはず)です。

 

「お金がないけど不安はない」人との違いは何でしょうか?「お金がないけど不安がない」人にとっては、お金が減ることは自分でコントロールできることです。自分の働きによって収入はコントロール可能です。お金が減らないぐらいに稼ぐことができるかもしれないし、お金の減り方を少なくすることができるかもしれません。

 

「お金がないけど不安はない」人は、例えれば自分で車を運転している状況です。下り坂になればブレーキを踏むこともできるし、ハンドルを切って別の道に迂回することもできる。

 

これに対して、「お金があるけど不安」な人は、下り坂をトロッコに乗っているような状況です。自分では制御不能な状況で坂を下っていくのですから、不安になるのも無理からぬことです。

 

ここまで紐解ければ、老後の不安の正体が見えてきます。不安の正体は、資金不足ではなく、自分ではお金をコントロールできない状況になることです。だとすれば、「老後の貯金はいくら必要ですか?」と問うても老後の不安が解消されないことはもうおわかりですよね。

 

お金を稼ぐには

老後の不安の正体がわかりました。不安の解消法が定年後も働いて収入を得ることもわかりました。次なる問いは、「一体どうやって定年後に稼ぐのか?」です。

 

この誰もが抱く問いをテーマにした田中先生の新刊。かなり話題になっているようです。発売直後から取材の依頼も入っているとか。取材で受けた質問「定年後も働くにはどんなスキルが必要ですか?」に田中先生はこう答えたそうです。

「明るい人になることじゃないでしょうか」

 

取材者さんは、あまりの変化球な答えにキョトンとされたそうです。まあ、そういう反応になりますよね。質問と回答の間には、あまりにも飛躍がありますから。

 

孫子女子勉強会では、この問いと答えのギャップを埋めるヒントが田中先生から提供されました。ああ、なんて贅沢な勉強会なんでしょう!

 

田中先生はいつものように曲線的に、そして考えるヒントを散りばめながら語りました。それらのピースを拾い集めて、私なりに読み解いてみました。

お金を稼ぐには

 

新刊には、商売の基本は「売り物」と「お客様」と書かれています。自分の「売り物」を見つけるためには、小さく色々と試してみることが必要です。今の時代は、副業が認められている会社も多いので、これを利用しない手はありません。

 

副業について、田中先生はこう言います。

副業で大事なことは、いくら稼げるかではなく、どんな経験ができるかです。こうなりたいと思う理想の人の近くにいれば商売のヒントが得られます。お金を稼げなくても、理想の人のお手伝いをすることをおすすめします」

 

「売り物」を見つけるのに必要なのは経験を積み重ねることです。やってみれば、それが好きか嫌いか、得意か不得意かが見えてきます。こういうことは考えただけでは決してわかりません。

 

「お客様」の見つけ方についてもヒントをくれます。

「人と出会っていい関係を築く。もう一度会いたいと思ってもらう明るいキャラであれば、声がかかるようになります

 

お客様は探すのではなく、向こうからお客様がやってくる状況をつくる。その状況をつくるのは、明るいキャラであると。

 

商売には、売り手とお客様の間に必ずコミュニケーションが発生します。スキルによる価値提供だけでなく、コミュニケーションの心地良さまでが購入体験なのです。

 

明るいキャラはどうやってつくられるかというと、これも経験の積み重ねだと私は思います。苦い経験をすれば人の心の痛みがわかります。嬉しい経験をすれば人を喜ばせたくなります。経験がキャラをつくる。これは私の持論です。

 

お金を稼ぐには、スキルよりももっと大切なことがあることがおわかりいただけたでしょうか。「定年後も働くのにどんなスキルが必要か」と質問した取材者さんにも、「明るい人になる」の真意が伝わることを願います。

 

「定年後も働いてお金を稼ぐには」について、田中先生の新刊により広く深く書かれています。ご興味ある人はぜひ。

 

 

老後の不安を吹き飛ばすには

お金を稼ぐのに大切なことは「経験」であることがわかりましたとさ。めでたし、めでたし。

 

とはならないのが、孫子女子勉強会らしいところです。

 

田中先生は、時々、会計士っぽい解説をすることがあります。こんな時、そう言えば田中先生って公認会計士だったなあと思い出します。

 

「『機会原価』というのがありましてね。節約によって失うものがあるんです」

 

機会原価とは、ある意思決定を行った際に得られる利益と最善の意思決定をしていれば得られた利益との差のことです。とかくに専門用語は、言葉で説明されても、わかったようでわからない。なかなかピンと来ないことが多いものです。

 

専門用語を使わずに、はじめからこう言ってくれればすぐわかるのにという解説が続くのが田中先生流です。それが故に田中先生が公認会計士だということを忘れてしまうのです(笑)

 

「暇になったら。。。一段落ついたら。。。そのいつかは来ません。人生後半になると、元気なうちに楽しいことはすぐやった方がいいんです」

 

この言葉で言わんとすることは明々白々にわかります。でも、せっかくなので、田中先生が「機会原価」を使って言いたかったことを図式化してみました。

経験価値曲線

つまり、こういうことです。人生の前半は、健康不安リスクが極めて低く、身体の性能は時間が経っても変わりません。何かを経験して得られる価値は身体を通じて得られます。ですから、人生の前半では、経験価値は時間が経っても変わりません。

 

ところが、人生の後半になると、経年劣化で身体のあちこちにガタがき始めます。ということは、人生の後半では、経験価値は時間とともに下がってしまいます。すなわち、同じ経験をするとしても、今やる方が数年先にやるより経験価値が高くなるというわけですここから導かれる結論が「楽しいことはすぐやった方がいい」です。

 

田中先生は、「今日の勉強会の感想を一言どうぞ」とリアル参加していた私に水を向けてくれました。それで、とっさに思い浮かんだメメント・モリの言葉を紹介して、こんなことを話しました。

メメント・モリという言葉があります。メメント・モリは、自分がいつか死ぬことを意識することです。数年後に先延ばしようとしている楽しみは、突然の死によって味わえないかもしれないと思ったら、今やっておこうという気持ちになりますよね」

 

これを聞いたオンライン参加の仲間がチャットに何かを書き込んだそうです。リアル参加組の私たちにはZoomのチャット欄が見えません。そこで、田中先生が読み上げてくれました。

「何かチャットに書き込まれたので読み上げますね。メメント・モリの和訳は『迷ったらやっとけ』」

 

メメント・モリの和訳として、「自分がいつか死ぬことを忘れるな」より「迷ったらやっとけ」の方が何倍も威力があって、気持ちが明るくなります。さすが孫子女子です!

 

老後の不安を解消するためには定年後も働く。でも、老後の不安の解消という守りの姿勢だけでは私たちは満足しません。不安など吹き飛ばして楽しく生きてこその老後です。そのための答えとして孫子女子が出したのがこれです。

 

おまけ

勉強会が終わってリアル参加組が外に出ると、地面には雪で濡れた痕跡がありましたが、もうすでに雪は降りやんでいました。冷気に肩をすくめながらも、心はなんだかぽかぽかしていました。

 

この日の懇親会は、いつもは満席で入れない人気店に入ることができました。メニューを見るとどれもこれも美味しそうです。一緒にお店に入った仲間たちとメニュー選びに迷っているその横で、田中先生が言いました。

「新年と新刊発売のお祝いに、フランベも頼みましょうか」

 

 

席に運ばれた容器に点火して、目の前で炎が燃えがる演出つきのお料理です。私たちが大いに盛りあがったことは言わずもがなです。もちろん、お味も文句なし。

 

果たしてそのお値段は。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新刊発売直後の著者の喜びがいかなるものかを間近で経験させてもらいましたとさ。ちゃんちゃん。