グラレコを描くとはどういうことか

 

孫子女子勉強会仲間の岸さんが、勉強会仲間に向けてグラレコオンライン講座を開いてくれたのはゴールデンウィークの最終日のことでした。今ではすっかりその言葉の認知度も上がったグラレコですが、グラレコを描くってどういうこと?がようやく腹落ちして言語化できました。

 

 

グラレコオンライン講座のプログラム

 

 気心の知れた孫子女子勉強会仲間がZoom画面上に勢揃いして、終始わいわいと楽しくアットホームな雰囲気で、岸さんが開催してくれたグラレコ講座を受講しました。

 

 岸さんのグラレコ講座はこんな流れのプログラムになっていました。

 

(1) グラレコ的自己紹介

 Zoomの共有画面に16個のイラストが描かれたスライドが共有されました。

 

f:id:n-iwayama:20200531163316p:plain

 

 各自がこのイラストの中からひとつを選んで、その絵を含んだ自己紹介を紙に描きました。その後で、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使って少人数に別れて、自己紹介の紙を見せながらお互いの自己紹介をしました。

 

(2) グラレコとは

 グラレコとは何かをグラレコで描いたスライドを見せながら説明がありました。

 

f:id:n-iwayama:20200531163418p:plain

 

(3) これだけで絵が描ける

 グラレコの大きな特徴である絵は、◯△□と波線と直線の要素の組み合わせで描けることが紹介されました。

 

(4) 絵から言葉を連想

 ここで絵の描き方にすぐに移らず、絵から言葉を連想するゲームが行われました。岸さんが画面共有した絵を見て、受講者がそれから連想される言葉をチャット画面に次々と書き込んでいきました。

 

(5) 絵の描き方と描く練習

 ここで初めて絵の描き方の説明を受けながら、実際に各自で絵を描きました。単純な線を描くことからはじまり、次に◯△□を描きました。

 

 いよいよ具体的なものとして、星やりんごやバットを描きました。さらには抽象的な意味をもつ会社や仕事を描くことへと進んでいきました。

 

 ものを描いた次は人の顔の表情を描きました。顔に胴体のついた人間の描き方、複数人の描き方まで進んで、絵を描く練習は終了しました。

 

(6) 言葉から絵を連想

 ここから実践に入っていきます。まずは、お題に出された言葉を絵で表現します。1つのお題につき20秒の制限時間つきなので、脳に汗をかく感じです。前半は「親子」「森」などの名詞のお題が出され、後半は「わくわく」「ふわふわ」などの抽象的な言葉のお題が出されました。

 

(7) グラレコを描くコツ

 絵を描く練習の次は、1枚の用紙をどう使って表現するかのコツが紹介されました。

  • 左から右に描く
  • 描いた後にまとまりのある部分を枠で囲む
  • つながりや関連を矢印でつなげる
  • タイトルは大きく太字で描く
  • 余白に後から気づいたことを付け足す
  • 全部描くより自分の気持ちが動いたことを描く
  • 場数を踏む

 

(8) グラレコにチャレンジ

 最後はグラレコを描くことにチャレンジです。岸さんのお財布に関するお話を聞きながら、各自がグラレコで記録をとりました。

  

 

グラレコ表現の魅力

 すっかりおなじみになったグラレコは、どうやったらグラレコが描けるか、ひいてはどうやったら絵が描けるかに注目されがちですが、岸さんのグラレコ講座プログラムが大きなヒントになって、グラレコって何?が見えた気がしました。

 

 グラレコはこれまで文字だけで書いていた文章に変わる新たな表現法です。

 

f:id:n-iwayama:20200531164147p:plain

 

 グラレコと文章の表現の違いは3つあります。絵と配置と構造化です。配置と構造化は密接に関係していて、配置が自由であるがゆえに構造化表現ができるとも言えます。

 

 

絵で表現する

 グラレコと言えば真っ先に思い浮かぶのが絵(=イラスト)です。絵の魅力は何といっても見て楽しいことです。

 

 絵が描くのが苦手という人は多いことでしょう。私もご多分にもれずにその一人です。確かに、岸さんが言ったように、グラレコで描く絵は単純な形と線の組み合わせです。それぞれのパーツを描けないという人はほぼいないにも関わらず、いざ描こうとすると描けないのはなぜか。その理由が今回わかりました。

 

 その理由は言葉と絵の関係にありました。絵が描けない理由は言葉と絵を1対1の関係で捉えてしまうからです。

 

 プログラムにあった「絵から言葉を連想」と「言葉から絵を連想」を注意深く見てみるとわかります。

 

 例えば、「絵から言葉を連想」した時、こんな絵が提示されました。これを見てどんな言葉が浮かぶでしょうか?

 

f:id:n-iwayama:20200531164354j:plain

 

 このワークでは、絵つまりイメージに対して、1対1で対応づいた言葉を当てはめようとするのではなく、イメージから自由に発想を広げて連想されるものを言葉で表現したのです。そうすると、「あじさい」「ショパン」「メアリー・ポピンズ」「海」など、次々に連想される言葉が出てきました。

 

f:id:n-iwayama:20200601113352j:plain

 

 この時、それぞれの頭の中で何がおこっていたかというと、絵を見てすぐに思い浮かぶ言葉(「雨」「かさ」「ビーチパラソル」)を選び出し、その言葉から連想される言葉を紡ぎ出しました。見た絵から2つのステップを経て連想する言葉を見つけ出したのです。それがゆえに、ひとつの絵からこんなにもバラエティ豊かな言葉が連想されたのです。

 

 「言葉から絵を連想」するワークでも何がおこったかを見てみましょう。このワークでは「南の島」という言葉を絵で表すことを行いました。「南の島」と絵が1対1に対応していると考えると、絵を描くのがとてつもなく難しくなります。

 

 まず、「南の島」から連想される言葉(「ヤシの実」「海に沈む夕陽」「カモメ」)に一度変換して、その言葉を表現する絵を描こうとするとぐっと描きやすくなります。

 

f:id:n-iwayama:20200531164621j:plain

 

 3つの絵は似ていないのに、「南の島」の言葉が横に添えられると、南の島を絵で表したように見えてくるから不思議です。

 

 言葉を絵で表現する場合も2つのステップを経ると、確かに、簡単なパーツの組み合わせで絵を描くことができるようになります。自分が絵で描ける範囲にまで言葉の意味を広げてから絵を描いて、その隣に言葉を書けばグラレコ表現ができます

 

 言葉を横に添えるなら絵を描かなくてもいいじゃないかという話もあります。確かに描かなくてもいいいのですが、グラレコは例えてみれば絵本のようなもので、絵があるがゆえに楽しくなり、人目をひいて読んでみようという気にさせる魅力があります。だから描ける範囲で絵を描くことがグラレコ表現の魅力アップにつながります。

 

構造化して表現する

 岸さんはグラレコを構造化するコツを2つ教えてくれました。

f:id:n-iwayama:20200531171151p:plain

 「描いた後に話のまとまりを枠で囲む」と「つながりや関連を矢印でつなげる」です。実際、私がこれまでに見たグラレコは、囲みや矢印がよく使われていました。

 

 表現とそれを見た時の理解のしやすさは表裏一体です。まとまりのある部分が枠で囲まれていると、どの部分が内容のまとまりなのかが見てすぐにわかります。つながりや関連を矢印でつながれていると、まとまりの関係がひと目でわかります。

 

 文章で書かれたものであれば、その意味を読み取って読者が頭の中で構造化を行う必要がありますが、グラレコは視覚的に構造化表現がされています。そのため、グラレコで描かれたものは全体を俯瞰して理解しやすいのが魅力です。

 

グラレコを描くとはどういうことか

 グラレコを描くとは「絵で表現する+構造化して表現する」というのが私の理解です。グラレコの絵を描くのに必要なのは画力ではなく発想力です。構造化するのに必要なのは全体俯瞰力です。

 

 グラレコを描くとは、話を聞きながら、言葉から自由自在に発想して絵を描き、常に全体を俯瞰しながら構造化することです。ですから、グラレコを描くには相当な能力が要求されます。

 

 グラレコと言えば、いかにして絵を描くかに注目されがちですが、私は「構造化して表現する」ことの方が難しいと思います。インプットした内容の本質を瞬時につかみとって構造化していくわけですから。グラレコは思った以上に奥が深いものでした。そんな奥深さに気づかせてくれた岸さんのグラレコ講座でした。

 

 私がいいグラレコだなあと思うのは、それを見ればどんな話がなされたのかがすーっと理解できるものです。それはひとえに構造化が優れているからです。そこに絵で楽しさが加わっていれば魅力倍増です。

 

 岸さんは孫子女子勉強会でもグラレコを描いてくれています。いつもいいグラレコだなあと思って見ていました。それは、岸さんの理解力と発想力のすごさゆえだったのです。おそらくは、場数を踏むことで、

(1) グラレコを描く

→ (2) 理解力と発想力が磨かれる

→ (3) グラレコが上手くなる

→  (1)に戻る

のサイクルが回った結果が、今の岸さんのグラレコなのだと思います。

 

 そんな岸さんにとって、グラレコを描くとはどういうことかは、こちらから聞くことができます。

 


File1:「描く」グラレコ 松本(岸)智子