会社でオンラインイベントをやってみた

珍しくも会社ネタでブログを書きたくなったのは、オンラインイベントをやってみての学びが思いの外に多かったからです。

 

 

オンラインイベントの幹事になる

 私が所属する会社では、3月下旬から在宅勤務がはじまりました。その後、在宅勤務が基本となる勤務制度変更に伴って、社内ネットワークへの接続環境が改善され、オフィスに行かないとできなかったことの仕組みも改善されました。業務では、オンラインミーティングやオンラインコミュニケーションが日常となり、その日常にもすっかり慣れました。

 

 私自身は在宅勤務に特別な問題を抱えていなかったので、SNSやニュースに流れてくる、オンライン環境になって雑談がなくなることの問題提起やオンライン環境での楽しみ方の話題はただ読み流していました。

 

 ある日、同じユニット(いくつかの部が集まった組織階層)のAさんから、会社の中で気軽にコミュニケーションできる場としてのオンラインイベント開催の提案とイベント幹事募集の呼びかけがありました。Aさんは、今年の4月から同じユニットになった女性で、まだ一度もお会いしたことがありません。

 

 Aさんからの呼びかけをみて、ちょっとの間考えて、幹事に手を挙げることにしました。手を挙げた理由は2つです。

 

 1つ目の理由は、Aさんと話をしてみたかったからです。会社組織の中で女性は圧倒的マイノリティーです。仕事をする上で、女性だからという理由での壁を感じたことはありませんが、会社生活の中では時に違和感を感じることがありました。それ以前に会社の中で女性と話をする機会自体が極めて少なく、オンライン環境になった今、お会いしたことのないAさんと話をするチャンスはこれしかないかもと思いました。

 

 2つ目の理由は、読み手の心理をよく理解した呼びかけの文面によるものです。幹事募集にあたって、1時間×2~3回の打ち合わせを経て何かやってみること、1回幹事をやったら抜けられないことはないことが書かれていました。幹事をやることのハードルは高くないと感じて、まずは1回やってみようと思えました。

 

 最近、転職入社した20代のBさん、4月に新卒入社したCさんも幹事に手を挙げて、Aさんと私を含めて4名の幹事団が結成されました。実はAさんも転職組ですが社歴は長く、社歴の長い女性2名と20代の男性2名が幹事になり、全員が組織のマイノリティ属性という珍しいメンバー構成になりました。

 

オンラインイベント当日までのスケジュール

 オンラインイベント当日まではこんなスケジュールで準備を進めました。

 

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            イベント準備スケジュール

 

 Aさんの予告通りに準備のためのオンラインミーティングは1時間×3回行いました。

1回目: お互いの自己紹介とイベント企画の発散的なアイデア出し
2回目: オンラインイベントの具体化
3回目: イベントの流れや役割確認などの事前チェック

 

 1回目のミーティング以降はチャットグループをつくって、チャットで会話しながら準備を進めました。

 

 オンラインイベントは、あらかじめ参加登録をしないことにしました。共有ファイルの宿帳(=参加者名簿)を画面共有しながら、イベント中に宿帳に参加者情報を同時編集しながら書いてもらおうということになりました。

 

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              宿帳

 

 3回目のオンラインミーティング時に、表形式で味気なかった宿帳フォーマットを、その場でイラストを貼り付けるなどしてやわらかい雰囲気が出るように編集しました。

 

 同じユニット所属とはいえ、会ったことも話したこともない4人の幹事団が、初回ミーティングから3週間後にイベント実施にこぎつけたのは、なかなかの出来だったと思います。

 

テーマは「組織文化の謎」

 オンラインイベント企画は、組織文化の謎についてゆるーく語る内容に決まりました。

 

 どの組織にもその組織だけに存在するローカルルールやローカル用語など、組織独自の文化があります。組織文化は長らくいると当たり前になり、それが組織独自の文化であることにすら気づかないものです。

 

 新しくジョインした人にとっては、そういった組織文化がわからなさを生み出す元にもなります。しかも、どこかで誰かに教えてもらう機会はなく、あらたまって聞くほどの話でもなく、いまさら聞けない話として蓄積されていきます。オンライン環境になるとますますその傾向は増すものと想像できます。

 

 こういった背景をもとにイベント企画が決まりました。幹事団がこの発想に至ったのは、転職してきて間もないBさんの一言に始まります。

 

「オンライン歓迎会で画面越しに会っただけでは、オンラインコミュニケーションのツールが用意されていても、気軽に連絡できるようにはなれない」

 在宅勤務が基本となった会社に入社してくる人の偽らざる気持ちだと思います。

 

 オフィスで仕事をしていれば、自然と聞こえてくる会話や普段の行動や発言からその人となりを感じ取って、あの人に聞こうという判断をしたり、こういうことで話しかけてもOKという判断をしていることに気づきました。

 

 オンライン環境で、そういう人物に関する情報が一切ない中で、名前の一覧とオンラインコミュニケーションツールを使って話しかけるというのは、よほどの強い必要性がある場合に限られることは容易に想像がつきます。

 

 私はBさんと同じ部だったので、Bさんの一言コメントを読んだ後、Bさんに電話をしました。

「わからないことがあった時に聞ける人はいますか?」

と尋ねました。

 

 業務上の疑問点については聞ける人がいて、親切に教えてもらえているとのことで安心しました。色々話しているうちに、役職名の略称がわからないことやメールの書き方に独自カルチャーがあることなどに話題がおよびました。新しく入ってくる人にとって組織の文化は謎だらけなんだなと気づきました。

 

 こうした経験を経ていたことと、転職してくる人も増えたことから、オンラインイベントは、「誰にも聞けない、今さら聞けない、組織文化の謎について語る」という企画ができあがりました。

 

 入社2年以内の人に不思議に思っていることをあらかじめ挙げてもらい、イベント当日はそのネタ帳を見ながらわいわい話そうということになりました。イベント当日までに更新されていくネタ帳を見て、私とAさんはイベント前からすでにチャットで盛り上がり、面白くなる予感しかありませんでした。

 

オンラインイベントをやってみた結果

 こうして迎えたオンラインイベント本番は、老いも若きも、わいわい楽しく組織文化をネタに盛り上がりました。

 

 誰かが質問すると、知っている人が「ここに書いてあるよ」とURLをチャット欄に書いてくれたりと、誰に聞けばいいのかわからない疑問がリアルタイムに解消されていきました。

 

 ネタはあり余るほどあったので、話題は尽きることなく、あっという間に1時間のイベントは終わりを迎えました。

 

 同じ内容を会議室に集まってやったらどうだったかなあと想像すると、そもそも人が集まったのかも疑問ですし、ここまで盛り上がらなかったような気もします。オンラインだからこそ気軽に参加できて、大人数でも同じネタでわいわい話せたのだと思います。

 

 テレワーク環境でのコミュニケーションに問題意識をもっていたからでもなく、オンラインイベントをやりたかったわけでもなく、純粋ではない動機で幹事をやりましたが、やってよかったなと思っています。

 

 在宅勤務環境で入社してくる人の気持ちや、在宅勤務環境で失われた情報源など、幹事をやらなかったら気づけなかったことがたくさんありました。

 

 4人の幹事でゆるーく話しながらも企画をつくっていく過程はとても楽しいものでした。自分ひとりでは思いつかなかったアイデアを重ね合わせながらカタチにしていくのは、チームで何かをつくることの醍醐味です。

 

 そして、私にとっての一番の収穫は、Aさんと仲良くなれたことです。つい1ヶ月前までは名前だけしか知らず、いまだに会ったことがなく、オンラインミーティングで3時間話しただけですが、心理的な距離はぐっと近くなりました。誰にも聞けない、今さら聞けないことに遭遇したら、Aさんに聞いてみようと思えるようになりました。

 

 一緒に何かの活動をやりきることが、誰かと仲良くなる一番の方法なんだなというのがオンラインイベントをやってみての最大の学びでした。