わざわざ行く旅

10月8日(日)、まだ薄暗い中、早朝5時40分発のバスで高松駅を出発しました。大阪駅でバスを乗り換えて向かった先は京都府日本海側にある京丹後市。3連休とあって高速道路の渋滞に巻き込まれ、京丹後市に住む友人の尾崎さんと落ち合えたのは13時30分頃でした。高松駅を出発してから実に8時間も経過していました。長い長い道のりでした。

 

そんな長い道のりをかけた行き先の京丹後については、その昔に訪れた天橋立以外に何があるのかも知らず、事前に調べることもなく向かいました。2泊3日の京丹後への旅のお宿は6月にママになったばかりの尾崎さん宅。東京からやってきた共通の友人である麻美ちゃんを含めて、京丹後で3人での再会を果たしました。

 

 

記憶から薄れる景色と味

 

京丹後では、尾崎さんの車に乗せてもらって透明度の高い日本海の海岸へ行きました。遮るものが何もなく目の前に広がる広大な海と潮の香りで、心に溜まった澱が洗い流されるような気がしました。尾崎さん宅から見える夕焼けの海もとてもきれいでした。

 

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         京丹後から見渡す日本海

 

尾崎さんのアレンジのおかげで、なぜ京丹後にこんな店があるのと思えるような名店での食を味わうことができました。牧場でとれたミルクを使った濃厚なソフトクリーム。フランスで修行して京都市内のホテルのオーナーパティシエが京丹後に開いたケーキ屋さんのとろけるようなチーズケーキ。ナポリで開かれたナポリピッツァ職人の世界大会で2位に入賞したピッツァ職人がいるお店「uRashiMa」の極上ピッツァ。関西の食通の間で名の通った「縄屋」さんの見た目も味も上品な魚菜料理。地元で採れた鮮度の高い食材が腕の磨かれた職人の手にかかった食にかなうものはありません。

 

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                                                  uRashiMaの極上ピッツア

 

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               縄屋さんの魚菜料理

 

景色も味も満足した旅でしたが、1週間たった今、京丹後への旅の記憶として残っているものを聞かれたら、残念ながらそれは景色でも料理でもありません。ですから、もう一度あの景色を見るために、もう一度あの味を求めて京丹後にわざわざ行きたいかと聞かれたとしたら、答えはYESではありません。美しい景色も美味しい料理も京丹後以外でも代替できます。

 

記憶に残る出会った人達

 

京丹後の旅の思い出として記憶に刻まれているのは、景色でも食でもなく、出会った人達です。

 

尾崎さんのコーディネートのおかげで、京丹後に移住してきた人や京丹後にUターンしてきた若い人達と出会うことができました。会話する中で、これからどんなことをやろうとしているのか、それはなぜなのか、どんな価値観をもっているのか、どんな課題があるのかなどを聞くことができました。それぞれの人の話も興味深かったのですが、何よりも注目したのは若い人達のつながり力とオープンさです。

 

京丹後に滞在中、尾崎さんのコーディネートで京丹後に移住してきたAさんのお宅にお邪魔してAさんにお会いすることになっていました。Aさん宅に行くと、約2週間前に京丹後に移住してきてAさん宅の隣りに新しくコワーキングスペースをつくる予定のBさんもやってきました。

 

翌日の午後は竹野酒造さんに見学に行く予定になっていたので、尾崎さんがBさんに「明日の午後、竹野酒造に行くけど良かったら一緒に行く?」と聞きました。Bさんは「行ったことがないので一緒に行きます」と答えて、一緒に行くことに加えて尾崎さん宅でランチを一緒にとることがその場で決定しました。

 

Aさん宅を訪問した日の夜は、京丹後市在住のuber社員のCさんが尾崎さん宅にお越しになって、3日フライングしての尾崎さんの誕生日を一緒にお祝いしました。ここでも尾崎さんが「明日、京丹後に移住してきたばかりのBさんがうちで一緒にランチを食べるけど、Cさんもランチ来る?」と声をかけて、Cさんのランチジョインが決定しました。 

 

翌日の尾崎さん宅でのランチで、BさんとCさんがご対面してつながることに。Bさんが「コワーキングスペースにいつでも遊びに来て」と言っていたので、コワーキングスペースにてCさんに新たな人とのつながりがもたらされることが予想されます。

 

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         尾崎さん宅でのランチ風景

 

Bさんと一緒に向かった竹野酒造では、竹野酒造のDさんから、酒蔵の案内とお酒の銘柄の説明をいただき、試飲もさせていただきました。Dさんから海外にも竹野酒造の日本酒を輸出していると聞いたBさんは、「海外に日本酒を紹介している友人がいるので今度連れてきます」と申し出ていました。

 

わずかな滞在期間中に若い人達がどんどんつながっていくのを目の当たりにして、このつながりから面白い変化がおきそうな期待を感じずにはいられませんでした。ただ会って話を聞いただけでなく、オープンマインドでどんどんつながっていく人達だったからこそ、旅の記憶として強く残ったのだと思います。

 

 

わざわざ行く

わざわざ行くという行動がおこるのはそこにしかない代替のきかないコトがあるからです。京丹後への旅でそのことをはっきりと認識できました。

 

そこにしかない代替のきかないコトとは何でしょうか。例えば、広島の原爆ドームを見た時の突き動かされる衝撃。例えば、直島の地中美術館を見た時の美術館の概念を覆される感覚。例えば、沖縄の海を見た時のもう一度見に来たいと思う気持ち。

 

唯一性の高いモノから受ける圧倒的な体験以外で代替のきかないコトは、そこに住む人に会うことでしょう。私がはるばる時間をかけて京丹後まで行ったのは会いたい人がそこにいたからでした。大切な友人である尾崎さんと生まれて4ヶ月の美和ちゃんに会いに行こうと思い、さらには麻美ちゃんも来るとなれば、行かない理由を見つけることはできませんでした。

 

わざわざ京丹後まで行って良かったと思っています。その理由は、尾崎さん、美和ちゃん、麻美ちゃんと会えたことはもちろんですが、尾崎さんにつないでもらった京丹後で面白いことをおこしそうな人達に会えたからです。

 

わざわざ行くという需要を掘り起こすなら、そこに住む面白いことをやっている人と交流するという視点も必要ではないかと思えました。わざわざ京丹後まで行ったおかげで、わざわざ行く旅について体験的に学ぶことができました。次はどこにわざわざ行くことになるのか楽しみです。