Clubhouseのリスナー体験を経て、Clubhouseの本質は何かという問いに向き合うことになりました。その問いに答えたら、Clubhouseがワクワクする道具に見えてきました。
Clubhouseデビュー
世間でClubhouseが話題になる中、iPhoneをもっていない私はClubhouseがどんな風に広がっていき、どんな使い方をされるのかを横目で静観していました。
そんな中、Clubhouseデビューするきっかけになったのは、田中先生がNHKラジオ歴史再発見「会計と経営を巡る500年史」の補講をClubhouseで行うお知らせを見つけたことでした。
ラジオ番組終了直後の田中先生の補講となれば、面白くないはずがありません。これまでの経験からすると、田中先生の場合は、本編よりも補講の方が面白かったりします(笑)
これはなんとしても聞かねばと思って、iPadでClubhouseを使用する方法をググったのがルームが開催される当日のお昼休みのことでした。なんとかできそうという目処をつけて、仕事が終わった後に急いで子どもに招待をもらい、滑り込みセーフで補講を聞きました。
リアル講義・オンライン講義とClubhouseの違い
Clubhouseの機能はだいたいわかっていたのですが、やはり実際に体験してこそわかることがあります。
リアル講義やオンライン講義では、前提が映像と音声の両方になります。それに対して、Clubhouseでは音声のみになります。
大した違いがないように思えますが、この違いが受け手の構えに違いをもたらします。映像があると、講義に集中して真剣に向かう構えになります。
Clubhouseでは音声を聞くだけなので、気軽に何かをしながらという構えになります。私は、ある時間は洗い物をしながら聞きました。
補講は、ラジオ放送では語れなかったここだけの話や、番組で語られたことを再確認して更に内容を発展させたり、補講だけで語られた内容などがあり、いつものように面白くて学びのある時間でした。
例えば、フランスの農民画家ミレーが画家を脅かす存在として登場したカメラをどう活用したかの話がありました。
「絵は1枚じゃないですか。絵を売ろうとしたら、見に来てもらわないと認知してもらえないんですね。
カメラが登場した時に、ミレーは自分の絵をカメラで写真に撮ってカタログみたいなのをつくったようなんです。こうすれば、見に来てもらわなくても色んな人に自分の絵の存在を伝えることができますよね。
ミレーはこういうことをやってるんですね」
ミレーのカメラ活用の話から、夢と希望とそれを支える経済力をつけることを学べることを確認し、そこからさらに複業の話題へと展開していきました。
ルームが終了した時、あー、あわててClubhouseデビューしてよかったと思いました。そして、はたと気づきました。こんなに豊かな学びがあったのに、気軽な構えでいたがゆえにメモをとるのを忘れていたことに。
Clubhouseがあぶり出す話芸と想像力
実体験してClubhouseの特徴を理解できたと思ったのが大間違いであったと気づいたのは、それから数日経ってのことでした。日課の散歩をしている途中で、
「気軽にながら聞きできることとは違うClubhouseの本質があるのではないか」
という問いが浮かび上がってきました。
リアル講義やオンライン講義では映像と音声の両方の情報を受け取りますが、内容理解には圧倒的に視覚情報に頼っています。なぜなら、私達はイメージで理解しようとするからです。
講師はパワポでわかりやすく提示をし、学習者はパワポを見て理解します。
私達は何かを伝えたり理解したりする時には、パワポに頼りきっています。テレワーク環境になってからは、オンライン会議で画面共有されたパワポを毎日のように見続けています。まるでパワポ病にかかっているかのようです。
ところが、Clubhouseでは音声しか使えません。スピーカーもリスナーもパワポに頼ることができません。そうなると何がおこるでしょうか?
スピーカーは話芸でリスナーに想像させなければなりません。リスナーは、音声から想像して理解しなければなりません。
パワポが使えないClubhouseは講師の話芸とリスナーの想像力をあぶり出す装置というのが、Clubhouseの本質は何かという問い対して私が出した答えです。
Clubhouseは気軽にながら聞きができるというのは表層的な捉え方に過ぎず、オンライン講義よりもはるかに想像力を要求されるものなのです。
パワポというテクノロジーの出現によってプレゼンは効率よくできるようになりました。そのかわりに、講師も学習者もある種の能力を退化させてしまったのだと気づきました。
ミレーが最新テクノロジーとして出現したカメラをマーケティングの道具に使ったように、道具を使う時にも人間の想像力を発揮するチャンスはあります。
Clubhouseは退化させてしまった話芸や想像力を磨く道具として使えるのかもしれません。Clubhouseは想像する楽しみがある道具だと思うと、ワクワクするものに見えてきました。
情報量の多さと想像する楽しみはトレードオフです。こんな当たり前のことをすっかり忘れていました。情報を受け取る時にも余白が大切ですね。
ところで、Clubhouseの情報伝達の構造はこれに似てると思いませんか?