孫子女子勉強会が長く続くワケ

孫子の兵法をテーマに月に1回貸し会議室に集まって開かれる女性限定の孫子女子勉強会も6年目に突入。講師の田中先生の周囲では孫子女子勉強会の知名度がじわじわと向上し、2019年4月に発売された守谷淳先生の新著「マンガ 最高の戦略教科書 孫子」に「孫子女子勉強会」の言葉が掲載されるという快挙も成し遂げました。講師がボランタリーで行う勉強会はいつの間にか自然消滅するパターンが多い中で、孫子女子勉強会はなぜこんなにも長く続いているのでしょうか。令和初回の勉強会は、孫子女子勉強会のこれまでを振り返る総集編として開催されました。私自身もあらためて「孫子女子勉強会とは」を振り返る中で、この勉強会が長く続いているワケが見えてきました。

 

 

孫子女子勉強会のテーマ

勉強会では、講師の田中先生が選定した毎回のテーマが設定されていて、1枚程度のレジュメにまとめられて参加者に配布されます。このレジュメだけを見ても、その勉強会がどんな内容だったのかはほとんどわかりません(笑)。なぜなら、このレジュメは例えていてば湖に投げるための小石のようなもので、それを投げた後にどんな波紋が広がるかは小石を見ただけでは全くわからないのと同じだからです。

 

毎回のテーマは基本的に孫子の兵法からの1節をとりあげています。例えば、「百選百勝は善の善なるものにあらず。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なるものなり」というような一説をとりあげ、勝つことより不敗を目指すべきという解説の後、参加者が差し出す事例も交えて、時には真剣に時には大笑いしながら、解説と自由な発言によって会が進みます。

 

また、ある時には、孫子の兵法とは別の文献から、男女がわかりあえない理由を解説した一説をテーマにとりあげ、「なるほどそうだったのか!」「全く理解できない」などとおおいに盛り上がることもあります。

 

孫子の兵法を体系的に勉強しようというより、適時にかなった一説をテーマとしてとりあげ、それをもとに考えていくのが孫子女子勉強会です。時には、以前にもとりあげたテーマを再びとりあげることがありますが、その時の時流によってまた違った意味合いをもって物事を見る指針となってくれます。孫子の兵法にからめて、別の文献からもテーマをとりあげることがあります。ですから、孫子の兵法をテーマにしながら無限に勉強会を続けることができるようになっています。

 

 

孫子女子勉強会で学んでいること

女子限定の勉強会で「孫子の兵法」がテーマと言うと、大抵の場合、???という反応が返ってきます。孫子の兵法は戦いのための指南書で、ビジネス応用として学ぶ男性が多いものですが、私達は人生の指南書として孫子の兵法を学んでいます

 

勉強会が始まった当初は、まだまだ男性中心の会社組織の中で、女性がどのようにして生きていくのかを学びのメインテーマとしていました。男性に勝つのではなく、少数派の女性が負けないためにどうすればいいかは、敵多数の中で生き残る方法を説く孫子の兵法から学べることが多くありました。

 

男女がわかりあえない理由を学んだのは、「彼を知り、己を知れば百戦殆ふからず」と孫子が説くように、男性と女性の思考スタイルの違いを学ぶためでした。

 

勉強会を続けているうちに、「人生100年時代」という言葉が時代のキーワードとして注目されるようになりました。それに合わせて、勉強会のメインテーマは、「会社組織の中でどう生き残るか」から、「いかに自立するか」に移行していきました。

 

ある回では、マズローのBe動機とDo動機をテーマにし、自立している人はBe動機で生きていることを中心に意見交換しました。

 

総集編となった今回もBe動機とDo動機が話題にのぼりました。

f:id:n-iwayama:20190519163432p:plain

              Be動機とDo動機の生き方

 

勉強会で意見交換しながら、子ども時代は誰もがBe動機で生きていても、社会人になると自分の能力の不足に気づいてDo動機で生きるようになることが明らかになりました。その後、Be動機で生きて自立する人と、組織の論理にしばられたままDo動機で生きる人に分かれるだろうという議論になり、いかにしてDo動機からBe動機への転換を成し遂げられるかという次回テーマも浮かび上がってきました。こうやってテーマが次回へとつながっていくことで、途切れることなく次回もますます楽しみに勉強会は続いていきます。

 

ちなみに、このブログを書きながら、子ども時代のBe動機とDo動機を経てからのBe動機は異なるのではないかと気づきました。子ども時代のBe動機は本能的にありたいままに生きることですが、Do動機から転換したBe動機は、己と己をとりまく社会の動きを知った上で自分はかくありたいというBe動機だと思うからです。

 

私達はこうやって、孫子の兵法をテーマにしながら、変わりゆく時流の中でいかに楽しくハッピーに生きていくかをこの勉強会で学んでいるのです。

 

 

孫子女子勉強会の開催方法

孫子女子勉強会は、田中先生を含めて5人とこじまんまりと始まりました。少人数の貸し会議室を借りてスタートしたのですが、ある時、大人数の会議室しか予約がとれなかったことを機会に、参加者をクチコミで広げることになりました。その後も、参加者の紹介制で少しずつ参加者が増え、東京以外に住む参加者にも広がりをみせました。

 

参加者が増えても、貸し会議室で行うスタイルは変えずに、参加できる人、参加したい人がその回ごとに集まって勉強会を開くスタイルをずっと続けてきました。その回によって人数の多少はありますが、参加者がゼロになることはなく、例え少人数開催になっても、少人数だからこそのざっくばらんな語らいを中心として途切れることなく続けてきました。

 

立派な会場で行うのではなく、いつもの貸し会議室を借りて、会議室費用を割り勘で支払いするスタイルも無理なく勉強会を続けてこられた理由のひとつです。

 

孫子女子勉強会メンバーは、東京だけでなく他の地域にもいます。九州や沖縄在住の仲間は東京に来る予定とあった時、または来られるタイミングで東京に来て、勉強会に合流する形をとっていました。とはいえ、毎回は参加できないのが東京から離れて住む参加者にとっての悩みどころでした。私も一時期、四国に赴任していたことがあり、その時は、参加できない悔しさを毎回かみしめていたのでその気持はよくわかります。

 

f:id:n-iwayama:20190519163642j:plain

      孫子女子勉強会のZoom中継

 

これまでは東京の貸し会議室を会場にして集まれる人が参加するスタイルを踏襲してきましたが、孫子女子勉強会も今どきのテクノロジーを取り入れ、離れた地に住む参加者への参加の門戸を開けるようになりました。アメリカのヒューストンに赴任した勉強会仲間の強い熱意と熱烈サポートする東京メンバーのおかげで、前回からZoomを使って遠隔地とも結んで中継する勉強会の試みを始めました。前回はヒューストンと東京をつなぎましたが、今回はヒューストン、東京、九州2地点の4拠点をつないで実施しました。これで、東京以外に住む参加者も勉強会に参加できるようになりそうです。

 

 

孫子女子勉強会のコミュニティ

勉強会コミュニティは参加者の数を少しずつ広げてはきましたが、大きく拡大することはありませんでした。参加メンバーのFB投稿に対して、「私も参加したい」というコメントがつくことがありますが、あくまでも顔の見える関係をキープできるサイズで、参加者のおすみつきのある人に限ってメンバーを増やしてきました。

 

それがゆえに、勉強会の中で、「ここだけの話なんだけど・・・」という本音トークを交えて意見交換できる場ができています。いわゆる心理的安全性が保たれています。私達は心理的安全性が保たれるコミュニティであることに細心の注意を払ってきました。これが、コミュニティが崩壊したり自然消滅することなく勉強会が続いているワケのひとつです。

 

ですから、遠隔配信ができるようになったからと言って、誰でも参加できるオープンな勉強会になることはないと思います。私達は参加人数という量の拡大を目指しているのではなく、顔が見える範囲でともに学ぶコミュニティとしての質を重視しているからです。

 

勉強会メンバーには、初期からのメンバーでみんなが大好きで、みんなを大好きでいてくれる象徴的な存在の人がいます。肩書を聞けば「おっ」と思うような方もいます。けれども、参加期間や肩書は全部取っ払ったフラットな関係で、ともに学ぶ仲間という関係でつながっています。

 

 

孫子勉強会が長く続くワケ

このコミュニティの質を維持してきたことこそが、勉強会が6年もの長きに渡って続いてきたワケであり、これからも続くであろうと思えるワケです。

 

あらためて振り返ってみると、勉強会が続いてきたのは不易流行を実践してきたからでもあります。孫子の兵法という勉強会の大きなテーマとコミュニティの質は変えずに、勉強会から学ぶことや開催方法は「兵の形は水に象る」がごとく、その時々で臨機応変に実践してきました

 

長く続くものには続くなりのワケがあり、目に見えない地道な工夫がきちんとなされているのです。だからこそ、これだけ長く続いても飽きることなく楽しい勉強会であり続けられるのです。そして、これから先も続いていくことを誰も疑わずにいられるのです。