若者は時代を映す鏡

「今どきの若者は・・・」というのはいつの時代にも言われることです。最近、臨床栄養学の研究をしている大学院2年生の長男を見て私自身もそう思いました。ただし、「・・・」の部分はネガティブな意味ではなく、ポジティブな意味で。そう思ったいくつかのエピソードをここに記しておきます。

 

 

テクノロジーへの感性

大学院で研究する中で、離れた場所で生活する栄養指導が必要な人との連絡手段がいまだに紙を使っていることに長男はいたく驚いたそうです。そのことに関して会話した際の長男のセリフは「なんでテクノロジーを使わへんねん!」でした。その言いっぷりから、どんな理由もテクノロジーを使わないという理由にはなり得ないと思っているようにさえ感じられました。デジタルネイティブ世代の彼にはテクノロジーを使うことによる圧倒的な利点が感覚的にしみついているのでしょう。

 

栄養学を専攻して、管理栄養士の資格を取れば、大学や大学院からの紹介で病院の管理栄養士の職に就くというのが通常のキャリアルートになりますが、研究を通して現場の実際を知った長男は、こんなやり方をやっていたら栄養指導を通じた健康への貢献ができるのにどれだけ時間がかかるかわからないと、大学院卒業後の進路は民間企業にと決意したそうです。今やネットで世の中の動きを誰でもキャッチできるようになったおかげで、長男もご多分にもれず、ネットからの影響を受けて、それも進路の舵を切ることを後押ししたようです。血糖値が測れるウェアラブルバイスのことを知って医療を受ける仕組み自体が変わると感じたり、栄養学の知識を持っているだけでは管理栄養士の仕事はAIに置き換えられると思ったと言っていました。

 

そんな話を聞いていたので、ヘルステック系ベンチャー企業の資金調達が活発化しているニュースの情報を送ったLINEへの返信がこれでした。

 

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正直、この反応にはちょっと驚きました。まだ社会に出ていない学生が言う言葉とは思えなかったからです。

 

今どきの就活

通常ルートとは違う道を進むと決めた長男は、就職希望する民間企業を自力で探し始めたそうです。いわゆる就活です。就活の話を聞いていると、今どきはそういうやり方もあるのねという驚きを感じました。

 

長男の就活はこんな感じでした。

 

まずはじめに就活の入り口がWantedlyなのかという驚きあり、Skypeで面談するのかという驚きありで、はるか昔の自分の頃の就活とは全く違う就活のやり方に驚くばかりでした。

 

今どきインターンシップ

大阪で下宿している長男は、最終的に、東京にある2社で大学院の研究を1ヶ月休めそうな夏にインターンシップをすることになったそうです。1ヶ月の間に2社でインターンシップと聞いたので、てっきり2週間ずつインターンシップに行くのかと思いきや、1週間のうち2日をA社に、残りの3日をB社にというスケジュールでインターンシップを行うことをそれぞれの会社との調整で決めたそうです。インターンシップ期間の複業的な働き方の発想はなかなかあっぱれです。

 

さらに、1社からは、オンラインでできるインターンシップも提案されたそうで、6月からオンラインインターンシップも始めるそうです。

 

企業を見る視点

同じヘルステック企業でもアプローチが違う2社でインターンシップをすることになった長男は、インターンシップ後に就職希望の企業を決めようと考えているようです。両方の企業の創業者と面談して健康へのアプローチの考え方を聞いた長男は、どちらの企業にも魅力を感じてはいるものの、自分なりにもっている考えからすると、「A社は俺が生きている間にはなくなっていると思う」と感じたそうです。

 

まだ社会人になっていない学生が、企業を見る時に、その企業の存続期間を自分の人生の長さと比較してみるという発想に驚きました。自分が学生の頃には、その企業があとどれだけ存続しそうかを考えるという発想自体がありませんでしたから。

 

若者の思考行動様式は時代を映す鏡

長男の思考様式や行動様式を見聞きして、自分が今学生だとしたら果たしてそのような思考行動ができるだろうかという思いがよぎりました。今どきの若者はたいしたもんだとも思いました。けれどもよく考えてみると、若者の思考様式や行動様式は、鋭敏な感性でその時代の潮流を感じて吸収した結果ではないかと思えるのです。

 

新しく生まれたテック系ベンチャー企業のサービスが瞬く間に社会に浸透していくかと思えば、老舗企業の倒産や事業売却も珍しいニュースではなくなり、企業のマーケットでの入れ替わりを当然と認識する。「AIが仕事を奪う」「人生100年時代」「働き方改革」などのキーワードがこれでもかというくらいに飛び交い、肌身にしみてゆく。日常的に携帯するスマホを通じて新しいテクノロジーを当たり前のように使う。そういったことが自然と若者の思考様式や行動様式に反映されていくのではないでしょうか。言い換えれば、若者の思考や行動を見れば、今という時代が見えてくるということができます。年を重ねると、自分の経験したことからなかなか脱皮できずに時代の潮流を読めないことがおこってしまいがちです。私達はもっと若者から学ぶべきなのだと思います。