地方転勤

地方に飛ばされた?

私は今年の5月に東京から、ここ香川県高松市に転勤してきました。見知らぬ土地だった高松に住み始めてから約半年。少しずつこの地のことがわかり始めて、高松暮らしにもすっかり慣れました。

昨日、かつて同じ部署で働いていた人が東京から出張で高松にやってきました。私のことを見つけて話しかけてくれました。私が高松に転勤していたことに驚き、直接的な言葉ではなかったけれど、「お気の毒に、東京から地方に飛ばされたんですか?」というニュアンスともとれる表現をされました。

 

地方転勤というと、東京から地方に飛ばされたというイメージがあるのでしょうか。私は東京から地方に追いやられた可哀想な人に見えたのでしょうか。

一方で、いよいよ東京を離れて高松に移動する日、羽田空港からFacebookに投稿した記事には、いつもの何倍もの「いいね!」がつきました。あの「いいね!」はどういう意味だったのでしょう。地方に飛ばされて可哀想という反応ではなかった気がしますが、本当のところはわかりません。

私が地方に転勤したわけ

私は、会社から一方的に転勤を命じられたわけでもありませんし、地方に飛ばされたわけでもありません。私は自ら高松への転勤を希望しました。家族と一緒に東京で暮らしていた私が、縁もゆかりもない高松に、その時点では一度も訪れたことのなかった高松に転勤したいと申し出たので、前職場の上司は驚いていました。

 

同じチームで仕事をしていた同志が、先に高松に転勤することが決まりました。彼女の方が何倍もこの分野で経験を積んでいて、私は彼女からたくさんのことを学んでいました。これからも彼女からの学びを得ながら、チームとして成果をあげていきたいと思っていました。それが、彼女とチームとして仕事ができなくなるという事態が生じたのです。高松転勤が決まった彼女は「これからもチームとして一緒に仕事をしよう」と誘ってくれました。

 

何の迷いもなく私も転勤しようと決めた

 

というわけではありませんでした。転勤するということは、単身赴任をするということでした。初めての単身赴任、見知らぬ土地での暮らしに不安が全くなかったかと言われれば、そんなことはありません。やはりありました。

 

でも、私にとっては、どこで仕事をするかより誰と仕事をするかの方がはるかに大事なことでした。もうひとつ、私は地域をテーマに仕事をしていたので、フィールドに近いところで仕事をした方がいいかもしれないとも思いました。

 

自分の中では、新しい環境に飛び込んでみようという気持ちが徐々に固まってきました。が、もうひとつ、転勤を躊躇する大きな理由がありました。それは、娘の進学問題でした。転勤の可能性がもちあがった時点で、娘の大学入試はまだ終わっていませんでした。もしも娘が浪人することになったら、その状況で離れて暮らすという決断にはなかなか踏み切れませんでした。転勤の可能性が持ち上がっていることも入試が終わるまでは胸にしまっておきました。

国立大学入試の前に私立大学の発表があり、娘からの合格の電話に思わずうるっときてしまいました。うるっときたのは、もちろん、合格したからというだけでなく、これで心おきなく転勤できると思ったからです。「私立の発表なのに、なに泣いてんの?」と言う娘にはわからない大人の事情があったのです。

 

地方での暮らし

こうして、私は高松に転勤してきました。バスの本数が少なかったり、お店が閉まる時間が早かったりはしますが、自分の生活スタイルをこの土地に合わせればいいだけの話で、特に不便は感じていません。

昨日高松に出張に来ていたかつての同僚に、空港に向かうバスについて聞かれたので、およそ1時間に1本の割合と答えると本数の少なさに驚いていました。時刻表なんか見なくても駅に行けばすぐに電車がやってきて乗れる東京からすると、不便極まりないように思えるのでしょう。

私は高松に引っ越してきて無理に生活スタイルを変えたというより、生活スタイルを変えるいい機会になったと思っています。バスの本数が少ないので、歩いて移動する機会が増えて以前よりもはるかに健康になりました。お店が早く閉まるので、買い物をするために会社から早く帰るようになりました。日没の時間が遅かった夏場は、会社帰りに海辺まで足を伸ばして海に沈む夕陽を眺めることができました。同じように鞄を持ったまま海辺に来ている人が何人もいました。

f:id:n-iwayama:20161029114209j:plain


ちょっとあった嫌なことも海を眺めているうちに自分の中でうまく消化できたり、嬉しいことがあった時は色々なことへの感謝の念を抱きました。何も考えずに海を眺めているつもりが、自然とリフレクションの時間になっていたようです。

 

同じ風景のように思えても、日によって景色の表情は変わります。晴れた日や曇った日の違いはもちろん、雲の形や風のそよぎ具合や波の音の違いで、感じる景色は変わります。何度見ても見飽きないのはそのためです。

 

こんな豊かな時間を過ごせるとは、高松に来る前には想像していませんでした。私は今の生活スタイルが気に入っています。家族と離れて暮らしてはいますが、ネットでいつでもつながれるし、週末に時々東京に帰って家族の近況を確認する二地域居住も悪くないと思っています。尊敬する彼女と一緒のチームで仕事を続けられて、仕事を通じた成長も感じられるし、面白く仕事ができています。

高松での暮らしは気に入っていますが、地方での暮らしの現実を知って驚いたのがこのニュースです。

高松市の中心部にイノシシが現れ、男女3人が襲われて手足を噛まれるなどのけがをしました。体長およそ1メートルのメスで、現場は海に近いことから、瀬戸内海の島から泳いで渡ってきたものと見られています。 

 

鳥獣被害の話はよく耳にしていましたが、まさか街中にまで出没するとは思いませんでした。猪が島から泳いで来たというということにもびっくりです。 

 

色々なことはありますが、瀬戸内の海に癒されながら、しばらくは高松での暮らしを楽しみたいと思います。