いつものように自由奔放に話題が展開する中に、ほとんどの問題はこれで解決するんじゃないかと思える大切なメッセージがこめられていました。
「孫子の兵法」より
2024年2月の孫子女子勉強会は風邪ひき中だったため、久しぶりのオンライン参加になりました。この日の勉強会で引用された「孫子の兵法」の一節はこれでした。
敵を攻め破り、敵城を奪取しても、戦争目的を達成できなければ、結果は失敗である。これを「費留」ー 骨折り損のくたびれ儲けという。
という意味です。
「大きな目的はどうだったんでしたっけ?を忘れてはいけません。大きな目的を考えると、実は撤退する方がよいというこもとあり得ます」と田中先生は力説しました。
いい人同士のトラブルの原因
田中先生が目的の大切さを力をこめて説いたのには理由がありました。田中先生自身が、そもそも何のためにやっているのかと首をかしげたくなるような事態に遭遇したからのようでした。
その内容についてはとてもここに書けません。勉強会のクローズドな場だけで共有できる話です。おそらく当のご本人たちは目の前の課題について、いたって真面目に取り組んでいたのでしょうが、その人達の本来的なミッションを考えると、私達にでもわかる「そこじゃない感」に笑いをこらえることができませんでした。
事態に遭遇した田中先生の冷静な解説が続きます。
「万事に言えることなんですが、いい人同士のトラブルの原因は正義の範囲の違いです。やってはいるけれど、自分たちの範囲のことしかやっていない。範囲が狭いんです。まさに費留です。目先にとらわれて視野狭窄に陥っているんですね」
笑うだけの私達とは対照的に、しびれるように本質を突いた解説です。「孫子の兵法」メガネをかけて世の中を見れば、こんな風に言えるようになるのでしょうか。その日が自分にやってくるのはいつになるのやら。。。
家訓大喜利
そこから一転、田中先生の郷里である三重県出身の三井高利の話題に移ります。
「三井家には家訓が多いんです。昔の偉い人は財産と家訓を残しているんですね」
へええ、家訓かあと聞いていたら、いきなりお題が出されるという急展開。
「今日は、みなさんに家訓を考えてもらいたいと思います。『+ ー ✕ ÷ < >』を使って、自分が大切にしていることを表現してみてください」
予告なしにお題が出されても、誰からも「ええっ」という反応が出ないのが孫子女子勉強会らしいところです。すんなりと各自で考えるモードに突入し、しばし沈黙の時間が流れます。
このあと、それぞれの家訓を発表し、勉強会はいつもとは違った盛り上がりを見せることになります。
「+ ー ✕ ÷ < >」を使った家訓は単純明快ながら、その人の思いが十分に表現されています。単なる家訓を考えようではなく、「+ ー ✕ ÷ < >」を使った家訓というお題の秀逸さに驚嘆しました。
それぞれの家訓が発表されるたびに共感の嵐がわきおこり、「笑点みたいで面白い!」と、お題を出した田中先生自身も大盛りあがりです。
えっ、私がつくった家訓が何かって?
私はこれにしました。
はじめは「+」を使ったありきたりなものを先に思いつきました。あまりにもありきたりすぎだと思い直しました。そこで思い出したのが、先日の「はじめの一歩」イベントで学んだ脱力の大切さです。それを家訓に採用したというわけです。
大いに盛り上がった後に、田中先生のまたしても冷静な解説が続きます。
「家訓は子孫に残すものではありますが、実は本人のためでもあります。考えることで自分が何を大切にするかが整理されるんですよね」
日米マネジメントの違いとOODA成立の要件
家訓大喜利で終わっても十分に満足する勉強会になったと思いますが、この後も田中先生から2つの話題提供がありました。
1つ目は、日米マネジメントの違いについて。
「欧米のマネジメントは、何かうまくいかないことがおこった時に、現場に無理をさせずに根本のルールを変えるんですね。対して、日本のマネジメントは、ルールを変えずに現場の運用でなんとかしようとします」
2つ目は、OODA成立の要件について。
「前にOODAのお話をしましたが、OODAというのはミッション・コマンドなんですね。ミッションという大きな目的を伝えて、具体的な任務遂行に関しては部下に任せるというものです。
米軍がOODAにシフトしたのは、兵士の質が上がったからなんです」
骨折り損のくたびれ儲けにならないたった一つの方法
家訓大喜利の印象が強く残る勉強会ではありましたが、いざブログを書いてみると、驚くべき発見がありました。それが何かを見てきましょう。
①いい人同士のトラブルの原因
いい人同士のトラブルの原因である正義の範囲の違いを図示するとこうなります。
田中先生の言った視野狭窄とは、相手の正義の範囲が見えていないことではなく、一段上の目的が見えていないことがわかります。
②家訓を考える
家訓を考えるが何をしていたかを図示するとこうなります。
大いに盛り上がった家訓大喜利は、目的に目を向けさせることでした。『+ ー ✕ ÷ < >』を使うことで、家訓はいやが応でもシンプルになります。シンプルになることは本質、つまり目的に近づくことです。
③日米マネジメントの違い
日米マネジメントの違いを図示するとこうなります。
日米マネジメントの違いとしては、ルールに対する見方の違いを指摘していました。これはつまり、目を向けるレイヤーの違いを指摘したものです。
④OODA成立の要件
OODA成立の要件を図示するとこうなります。
OODA成立の要件とは、田中先生が言っていたOODAを実行できる兵士の質を解明することに他なりません。
兵士は手足を使って任務を遂行しますが、OODAの定義からいって、任務遂行は目の前の出来事の観察から始まります。つまり、手足を動かす任務レベルの範囲に目を向ける必要があるのです。
それにとどまらず、目的にも目を向け、目的と目の前の両方に目を行き来させながら、任務を遂行することが必要になります。兵士の質が上がったというのは、それができる兵士がいたことを意味します。
日米マネジメントの違いを聞いた時、「日本は現場の運用でなんとかしようとするですって?そもそも、それではマネジメントと言えないのでは?」というツッコミをマネジメント層に入れたくなりました。
その後、OODA成立の要件を聞いて、現場層でも目的を意識しながら目の前の任務遂行ができている人がどれだけいるだろうかと考えさせられました。
この日の勉強会では色々な話題提供がなされましたが、それらは一貫して、「骨折り損のくたびれ儲けにならない秘訣は目的に目を向けること」を説くものでした。
田中先生から提供される次々に移り変わる話題を聞いている時には、そこに通底するメッセージを読み取ることは難しいものです。ですが、ブログを書くと、バラバラな話題に見えても、ひとつの「勉強会訓」がこめられていることに気がつくのです。
最近は、勉強会仲間のひめさんが勉強会ブログを驚くほどのスピードで書いてくれます。もう私のブログは洋梨、もとい、要なしと思っていたのですが、実はそうではありませんでした。
私がブログを書くことは、家訓と同じく、実は私自身のためなのでした。ですから、これからも自分のために、自分のペースでブログを書き続けようと思います。